大きくハンドルを回すと長いトンネルであった

さて、25日の夜も更けてまいりました(遅くなってごめんなさ い!)。これはRubyist近況[1] Advent Calendar 2021の25日目のエントリーです。

adventar.org

気づくと全部埋まりましたね、すごい。いくつか、自分も興味深く読みました。

諸々をまとめなきゃ、と思っていた矢先、いい感じの名前のアドベントカレンダーがあったのが参加理由 です。ただ情報量多めで、タイトルも抽象的になってしまいました。それぞれできるだけ短くしましたが、正直、 また1つずつ別エントリーにしたいところ。

まぁ主には、大学院生生活の話です。

TL;DR

この2年弱で、社会人を辞め、学位授与機構で学士の学位を取得し、社会人入試を経て大学院に入学し、 学位授与機構から「機構長緑秀賞」をいただきつつ、今は残り少ない大学院生生活を楽しんでいます。もう終わ るのかよ、という気持ちしかない。

社会人を辞めた (2020年2月)

昨年2月、2011年春から9年弱働いていた職場を辞めました。またそれによって、社会人自体を辞めることにしま した。後述する大学院への入学のためです。社会人生活は人に迷惑もかけたし、振り返って色々ありましたが、 一言で言えば「楽しかった」かな。楽しい人たちと知り合えて、興味深い事業に関われて、とても光栄でした。 お世話になった方々、ありがとうございました。

しかし最後、情勢が情勢だったので、対面でご挨拶どころじゃなかったのは心残りです。

学位授与機構から学位を取得 (2020年2月)

上と前後しますが、学位授与機構という国の機関*1の制度によって、学士(工学)の学位を取得することができました。 健康の問題があって人の何倍もの長〜〜〜い時間がかかりましたが、この時点でようやく大卒相当、ということです。

www.niad.ac.jp

よくがんばりました>俺。そして少しずつ助けてくださったたくさんの方々、ありがとうございました。

大学院に入学 (2020年4月)

その後の昨年春、大学院に入学して、修士課程の学生になりました。ずっと心残りだった研究生活をしたくなったからです。 社会人入試の制度は使いましたが、入学後は100%フルタイムの、単なるふつうの学生です。入試ではタイミングの問題で 学士の学位(取得見込み)が出願資格として使えず、ひやひやしました。専門はプログラミング言語と その処理系で、大きく見ればコンピューターサイエンスと言われる分野に当たると思います。

入学も一筋縄では行かず色々あったので、また書きたいな。関係・応援してくださった皆様には、本当に感謝し ています。

学位授与機構から「機構長緑秀賞」を受賞 (2020年11月)

大学院入学後の昨年秋、ありがたいことに学位授与機構から機構長緑秀 賞という賞をいただく事ができました(リンク先の写真は、自宅でスーツを着る齋藤氏)。

www.niad.ac.jp

学士学位取得者の中で「生涯学習に努め、特に精励したと認められた者」を 表彰する制度であるそうで、例年3000人以上の学位取得者が いる中から の3人として選んでいただいたのは驚きであり、本当に光栄でした。

学士学位取得の過程とこの受賞については、特に別エントリーを書きたい……ところです。

大学院生活と2年目の今 (2021年)

そういうわけで、昨年・2020年春から今に至るまで、大学院生をやっています。最初は何も分からず、焦りばかり 先行して辛かったのですが、今は研究というものが朧気に見えてきて、楽しくなってきたところです。 というところで、はい残り3ヶ月、というのは、なかなかに辛い。

しんどさ

特に最初はほんと、辛かったですね。確かに去年春ごろは今よりももっとピリピリしてて、誰だって辛かったと思 います。しかし自分はその上で、大きな環境の変化が重なってしまいました。入学式はもちろんなく*2、 大学や他の学生の雰囲気が一切分からないまま、遠隔で授業とゼミが続く日々。 研究室に入れるようになりメンバー全員の顔が分かったのは、制限が緩んだ秋ごろでした。

やってできなかったことではなく、やりたくてもやれなかったことがたくさんあったのは、振り返ればとても悔 しい日々でした。大学院の授業は結局、一度も教室で受けられないまま、単位を取り終わってしまいました。ま た色んな煽りを受けてか、自分も体調不良が長く続いて、本当に悩まされました。

うれしさ

それでも研究室があり、(あまり行けなかったけど)自分の席があり、という、研究のための環境があったのは 本当に幸せでした。優秀でポップカルチャーにも理解のある同期*3・後輩と、 何より良い先生に恵まれました。また大学の制度・チャンスも探して、いくつかは活用できました。

目下のタスクは、来月を目指して修士論文を書く、というところです。え、進捗? そうですね、手元には象の卵についての記述 だけがありますね……*4。ただある程度はすでに書き溜めた内容があるので、 それをまとめ直す+αをすれば何とかなるかな、と楽観的に考えています。

孤独につける薬

あとそうそう、Twitterでは似た世代・境遇の(現・元)社会人大学院生が何人もいらっしゃるので、フォローして ます。とても励みになっています、ありがとうございます。そういう方々ともチャンスがあれば、ぜひお話してみたいですね。 (なにせ数人しかいないらしい社会人入試の同期、誰とも面識ないので……)

Rubyとの付き合い

少しになりますが、Rubyistとしての話も。Rubyへの貢献は最近、残念ながら昨年のGSoCしかできて いません。ただ研究の評価・集計では、Rubyが大活躍しています。

評価を助ける友

言語処理系をいじっていると比較的低レイヤーな言語を触るときも多いので、それだけで集計をするのはなかなかめんどくさ いものです。なのでデータを集める時は、まずCSVを吐かせるようにしてます。ちょっと複雑ならYAMLで。いず れもライブラリまでは不要で、printfstd::cout << ...等々の手書きで十分です。

ここからがRubyの出番。最終的に得たいのは、Gnuplotや何やらのグラフだったり、TeXソースに埋め込む表だっ たりします。これと上記の生データとの間を埋めるのに、Rubyスクリプトを書きまくっています。とはいえ書き まくったとして、それほどの量にはならないし、CSVYAMLの入出力ライブラリもあるし、簡単な集計なら Enumerable::Statisticsとかも使えるし、と気楽なものです。何も特別なことではないでしょうが、ともかくありがとう、我等が友Ruby

話題を提供する友

また研究室内の輪講では、自分の担当の時、3.1の目玉機能であるYJITの論文を取り上げさせてもらったりもしました。LBBV、なる ほどなぁ。

www.ruby-lang.org

YJIT: a basic block versioning JIT compiler for CRuby | Proceedings of the 13th ACM SIGPLAN International Workshop on Virtual Machines and Intermediate Languages

drops.dagstuhl.de

3.1.0のリリース、おめでとうございます&ありがとうございます。

そんな感じで、自分とRubyとの付き合いはまだまだ続きます。

まとめ

この2年弱、自分としては中々の急ハンドルを切った期間でした。しかしそれは意図せず、コロナ禍と重なっ た2年弱でもありました。人生の中でも短くてちょっとがんばる特殊な期間、のつもりで始めたのに、世界全体が トンネルに入ってしまう状況では思うように過ごせず、不本意な気持ちが残る期間にもなってしまいました。

ですが、ハンドルを大きく切ってみた感想として一つ言えるのは、「なんとかなるよ」ということです。あれほ ど厚い壁を感じていた学士学位も、不安だった大学院入学も、やるべきことを具体的に考えてガリガリ進めれば、 できた。ちょっと大変かもしれないけど、できるかできないかで言えば、きっとできます。ググって、電話して、 質問して、調べましょう。なんとかなります。そしてなんとかっているのは、なんとかなるように手伝ってくだ さった方々のおかげでもありました。本当にありがとうございます。

あともう一つ、研究は楽しいですね、ほんと楽しい。新しいことを知るのは楽しいし、新しい提案をする過程は割と自由に やっていい気がしています。業務含め、日常生活で身に染みた実体験や興味を活かして考え直せるのは、社会人を経験 した大学院生ならではの特権だと思います。自分とは異なりますが、今はパートタイムや遠隔での研究も やりやすくなっているのかもしれませんし。どうです、やってみません?いつだって、あなたの立つ場所が ロドスですよ。

さて自分は、象の卵を探しにアマゾンの奥地へと飛ばなければ。 どうも美味しいらしいのですが、さて何味で食べようかな。

*1:正確には「独立行政法人 大 学改革支援・学位授与機構」

*2:一年後・今年の春にやりましたが、リモートでした

*3:もちろん年齢は一回り以上離れている

*4:内部テンプレートにあるダミー文言。オリジナルはこちら